うわのそら事件簿

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OARの選手はメダルもらえるのか?なぜ団体競技に出られるの?オリンピックでの国の意味って何

平昌五輪では、ロシアが組織ぐるみのドーピング違反をしたとして国としての出場を禁止され、ロシアの選手たちはOARとして出場している。個人資格ではあるけれど、「オリンピック・アスリーツ・フロム・ロシア」というグループ名がつけられていて、ロシアと入っている。
平昌五輪でのこれまでも表彰式でわかるように、メダルはOARの選手に与えられている。ということは、メダルはロシアのものなのか。

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OARの選手はメダルもらえるのか?

  • もらえる

個人としてもらえる。ロシアが取ったものとしてはカウントされない。

表彰式ではロシア国歌は流れないし、ロシアの旗を掲げることもない。あくまで個人参加。

OARはなぜ団体競技にでられるの?

個人資格で参加、ということになっているのになぜOARは団体競技に出られるのか。

これは、

  • 国際オリンピック委員会が「バランス」を取った結果

で、ロシアの組織ぐるみの

  • ドーピングに無関係な選手への犠牲を強いない

ためである。
よってロシアの意向も組んで、チームの名称が「オリンピック・アスリーツ・フロム・ロシア」。ロシアからのオリンピック選手団、個人資格だけれどロシアの選手、というお茶を濁したようなチーム名になってるのである。

これまで個人資格で出場する選手のチーム名は、いわゆる「オリンピック独立選手団」で、「インディペンデント オリンピック パティシパンツ」や「インディビジュアル オリンピック アスリーツ」「インディペンデント オリンピック アスリーツ」だった。国名は入っていなかった。

今回はだいぶ特別な措置となった。

それってロシアを出場禁止にする意味あったの?

バッハ会長は、言っている。

  • これはバランスである

ロシアを出場禁止にすることでオリンピック委員会のメンツを保ち、一方でクリーンな選手をまもったし、チーム名にロシアを入れることでロシアのメンツも保った。

実際、会場で応援しているロシアの人たちも、「気持ちはロシアだから」、「冷静に考えれば旗や国家ってそんなに意味ない」「なんて名前で呼ばれても気持ちはロシアだから問題ない」というのが大方だとか。

だとしても、国際オリンピック委員会としてはおおいに意味があったということである。

ロシアは、冬季五輪では特に最強豪国のひとつ。国としての勢力も影響力も大きい。そんな国が国ぐるみで重大なルール違反をした。もちろんロシア側は否定しているけれども、世界の認識はクロだ。

もしなんの制裁も下さなければ、ロシアの圧力に屈したと世界中が考えるだろうし、オリンピックの威厳は地に落ちる。そんな信用できない大会は人々の支持を得られず衰退していく運命であろう。

平昌には169名が出られることになったが、ソチの時は232名でサイズ的には約27%減。ソチの時からトップ選手が入れ替わっているとはいえ、出場禁止となった選手もたくさんいる。ロシアとしてもダメージを負っている。

バッハ会長は、言っている。

  • ロシアに屈辱を与えるための措置ではない。

目的は、

  • オリンピックの健全さと公正さを保つため。

それに、ロシアの選手の数や強さを考えれば、ロシア選手がいないオリンピックがどれだけ盛り上がらなくなることか。

というわけで、この措置がちょうど意味のある落としどころと考えられたということだ。

さらに、今大会で決定に従い、問題がなければ、閉会式の時にロシアの出場禁止措置は解除されるという。

よって、これまでの他の国に対する措置に比べて、骨抜きなのではないか、ロシアにだけ甘いのではないか、という声も大きい。

 

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オリンピックでの国の意味って何

オリンピックに出場するには、国の代表でなければならないのか。答えはノーでありイエスである。

なぜなら、今回のように「個人資格」で出られることもあるから。この場合は国の代表ではない。だからノー。

だけれども、選手は自分の立場を選べない。個人資格で出られるのは、国際オリンピック委員会がそう決めた場合だけだからである。今回のようなルール違反のほかに政治情勢が理由の場合がある。それ以外の場合には、必ず国の代表でなければならないから、イエスというわけである。

「国」(Nation)の定義は難しい。たとえば、オリンピック、サッカーワールドカップ、国連を見てもそれぞれ違った数のチームが「国」として登録されている。

オリンピックの場合は、オリンピック委員会ごとに国となる。基本的には国連と連動して、国連に登録されている国すべてにオリンピック委員会がある。それに加えて、時々の理由で歴史的にオリンピック委員会がある地域(テリトリー)、例えば台湾やパレスチナ、がオリンピックでは国(Nation)となる。だから日本語では、Nationを国と地域、と呼ぶ場合もある。

さらに加えて、特別な場合の個人資格。これがオリンピックの場合の国(Nation)である。

このことを踏まえると、オリンピックでの「国」は、この大掛かりな大会に

  • 整合性を保つためのルール

と言うことになる。

別にもともとが国対国の競争なのではなくて、効率よく運営するためにそのように組織化したものであると言える。

実際これまでに、デンマークとスウェーデン合同チーム、アメリカとキューバ合同チーム、イギリスとボヘミア合同チーム、なるものが参加したことがある。

また、よくあることにオリンピック出場のために国籍を変えることが普通に行われている。ソチ五輪の時はドイツの王子様がメキシコ代表、シンガポール生まれでロンドン育ちのスキー選手がタイ代表であった。平昌でも、アメリカやカナダ育ちの選手が熱帯の国の代表として出場している。これらはルール違反ではない。

国ごとのメダルテーブルとか、金メダルなら国歌を歌うとかあるけれど、それはまあ形だけというか、それを楽しむためというか、自分とは違う人たちの存在を知り理解し、連帯感を持つためのシンボル化された「儀式」なのである。

近代オリンピックの精神「オリンピズム」では、オリンピックについて次のように提唱している。

スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍など様々な差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する
joc.or.jp

近代オリンピックの父、クーベルタンは、

オリンピックの理想は人間を作ること、つまり参加までの過程が大事であり、オリンピックに参加することは人と付き合うこと、すなわち世界平和の意味を含んでいる
joc.or.jp

と考えていた。

オリンピックの国の定義は、極めて政治的なUNと連動しているけれども、それは何よりも平和とよりよい世界の実現がオリンピックを開催する理由だからである。

というわけで個人的な意見だが、まとめると、オリンピックでの国の意味は、オリンピックの効率よい運営のためのルールかつ平和を願う儀式的なもの、と結論したいと思う。

 

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まとめ

OARとして出場している選手は、メダルをもらえる。ただし、ロシアが取ったことにはならない。個人資格なのになぜ団体があるかというと、OARは違反行為とは関係がないロシアの選手たちのためのチームだからである。ただしこちらもロシアが取ったことにはならない。
オリンピックでは、選手を国という政治単位の代表としているが、それはオリンピックはそもそも平和実現のために開催されているものであって、国という単位が重要なのではない。

 

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