弾劾裁判とは何か!アメリカ大統領の過去の事例と裁判期間
アメリカのトランプ大統領の弾劾裁判が始まったと報道されている。弾劾裁判とは一体何か。アメリカ大統領の弾劾裁判の過去の事例はあるのかなどについて調べてみた。
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弾劾裁判とは何か
広辞苑によると、弾劾裁判とは、
公務員に重大な法違反があったときに、議会が刑事裁判的手続に従ってこれを裁く制度。
日本大百科全書によると、弾劾裁判とは、
政府高官や裁判官など一定範囲の公職にある者の非行に対し、議会内の弾劾裁判所impeachment courtが裁判手続によって、その責任を問い罷免させることをいう。
ざっくりいうと、悪いことをした公職にある人を辞めさせようという裁判。
日本では、憲法で裁判官のみに適用される制度であるが、アメリカでは、合衆国憲法と各州の憲法で採用されていて、国レベルでは、大統領、副大統領も含めた議員や政府高官などの行政官と連邦裁判官に適用される。
だから、トランプ大統領の弾劾裁判とは、トランプ大統領は悪いことをしたから辞めさせよう、という裁判のこと。
アメリカ語で弾劾裁判は、「impeachment trial」。例えば、ワシントンポストでは、トランプ大統領の弾劾裁判開始を「Historic impeachment trial of Trump begins in the Senate」(トランプの歴史的弾劾裁判が上院で始まる)と報じている。
参考:アメリカ合衆国憲法
アメリカ大統領の過去の弾劾裁判の事例
トランプ大統領の弾劾裁判は、アメリカ大統領の弾劾裁判として、アメリカ史上
- 3例目
過去に弾劾裁判にあった大統領2名とは、
- アンドリュー・ジョンソン(民主党) 1868年
- ビル・クリントン(民主党) 1998年
結果は、
- どちらも「無罪」
よって、これまで弾劾裁判で辞めさせられた大統領はなし。
しかしながら、他に、弾劾裁判にかけられそうになった大統領が2名。
- ジョン・タイラー 1842年
- リチャード・ニクソン(共和党) 1974年
タイラー大統領は、弾劾裁判にはならなかった。ニクソン大統領は、いわゆるウォーターゲート事件が原因。もはや弾劾裁判になることは必至と理解したニクソン大統領は、訴追直前に、自ら大統領を辞任したため弾劾裁判は行われなかった。
ジョンソン大統領の事例
ジョンソン大統領は、初めて弾劾裁判にかけられたアメリカ大統領である。
ジョンソン大統領は、1865年からリンカーン大統領の副大統領であったが、1965年4月にリンカーン大統領が暗殺されたため、大統領に就任、1869年3月まで務めた。
弾劾された直接の原因(訴因)は、政敵だった陸軍長官を解任したことが違法だったということ。実際は、奴隷制廃止を唱える議会との対立であった。
弾劾の成立には、上院での弾劾決議で3分の2以上の賛成が必要で、その時の3分の2は36票。採決では、賛成35票、反対19票で、1票差で罷免を免れた。
弾劾裁判は、1868/3/5に始まり、5/26まで約3か月続いた。
弾劾裁判の後は、翌年の1869年に任期満了で退任。弾劾裁判の影響は大きく、次の大統領選の候補には選ばれなかった。
クリントン大統領の事例
クリントン大統領は、1993年1月から2001年1月の大統領である。
トランプ大統領の弾劾裁判の訴因は、セクハラ裁判での偽証と司法妨害。世に言うモニカ・ルインスキー事件という不倫スキャンダルであるが、訴因は不倫そのものではなく裁判での偽証と司法妨害であった。
弾劾裁判では、偽証については賛成ー反対が、55-45、司法妨害については50-50でどちらも3分の2の賛成には至らず、罷免とはならなかった。
上院での弾劾裁判は、1999/1/7に始まり、2/12に終了。
クリントン大統領は支持率を保ったまま任期満了まで務めた。しかしながら、クリントン政権の副大統領であったゴア氏は2000年の大統領選で大統領になれなかった。
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トランプ大統領の弾劾裁判はいつ結果が出るのか
というわけで、過去の2度の事例では、
- ジョンソン大統領 約3か月
- トランプ大統領 約1か月
けっこう短い。ではトランプ大統領の場合もそうだろうか。
1/17現在の報道では、
- 弾劾裁判は数週間はかかる見通しであるが、どれだけかかかるかは、わからない
となっている。
2020年はアメリカ大統領選挙の年。2月上旬には大統領選の予備選が始まるため、大方はその前に終わらせたいと考えているということである。
また、報道では、弾劾裁判を行う上院では、トランプ大統領の共和党議員が多いこと(共和党53、民主党45、無所属2)や過去に罷免された大統領がいないことなどから、3分の2以上の罷免賛成にはならず、トランプ大統領は無罪となる可能性が高い、としている。
トランプ大統領の訴因をおさらい
トランプ大統領が弾劾されている理由(訴因)は、いわゆるウクライナ疑惑。問われるのは、
- 権力乱用と議会妨害
ウクライナ疑惑とは、ウクライナに対し、政敵であるバイデン前副大統領を捜査して選挙に不利になる情報を探すよう圧力をかけたとされること。これが権力乱用。
そして、下院の弾劾調査を拒否して議会の権限を妨害したことが議会妨害の容疑である。
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まとめ
トランプ大統領は、権力乱用と議会妨害をしたから大統領にふさわしくないので辞めさせる、と、弾劾裁判にかけられた史上3番目のアメリカ大統領である。過去の二人の事例では、1か月~3か月で裁判は終了、結果は否決で、辞めさせられていない。
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