ウェディングドレスってなぜ白なの?|日本の花嫁衣裳が白い理由

結婚式の花嫁といえば、白のウェディングドレスや白無垢といった白い衣装を思い浮かべる人が多いだろう。
でも、ふと思ったんです。
なぜ花嫁衣装は白いの?
事件ファイル No.007|白の花嫁衣裳の謎
発端|白い花嫁衣裳の始まり
白いウェディングドレスの始まり
ウェディングドレスが白になったきっかけは、1840年にイギリスのヴィクトリア女王が、アルバート公との結婚式で着た純白のドレスにある。
当時のイギリスは、世界帝国として絶大な国力を誇り、「世界の中心」であった。ヴィクトリア女王は、今でいえば、絶大なインフルエンサー。イギリス王室のファッションや生活様式はヨーロッパの上流社会における規範であり、ステータスであり、新聞や雑誌が普及した時代ということもあって、そのまま世界の流行となった。
白無垢の始まり
白無垢は、室町時代以降に武家の間で始まった白い婚礼衣装が起源である。江戸時代に武家の正式な婚礼衣装として確立した。
とはいえ、白を婚礼衣装の色とした感覚の土台は、それよりもずっと前、平安時代の貴族社会にあると考えられる。
平安時代には、白が「神聖」「清浄」「純潔」を象徴する色とされ、儀式や祈祷の場面で白い衣装が使われていた。「白が神聖で清らかな色」という感覚がこの時期に根付いた。
さらに、白無垢が「神前式の衣装」として定着したのは、明治時代以降のこととなる。明治政府は、神道を国家の宗教と位置づけ、推進した。その一環として、神前結婚式が奨励された。
1900年(明治33年)には、皇太子嘉仁親王(後の大正天皇)の結婚式が、皇室の結婚儀礼として初めて、皇居内の神殿で神前式として執り行われ、新聞記事では、節子妃が伝統に則って白無垢に身を包んだと報道された。
それを模範とする形で、神前結婚式は、一般にも広まり、その際、白無垢が正式な婚礼衣装とされ、神前結婚式とともに白無垢が浸透していった。
謎解き|なぜ白が花嫁衣裳のスタンダードになったのか
王室の影響力とメディアの力
ヴィクトリア女王が純白のドレスを選んだことが画期的だったのは、彼女が「世界の中心」と呼ばれた大英帝国の象徴であり、その一挙手一投足がヨーロッパの貴族社会から市民階級まで広く注目されたからだ。
王室ファッションは上流階級の規範となり、当時普及し始めた新聞や雑誌は、結婚式の詳細を白黒の挿絵や活字で伝えた。「白いドレスをまとった王妃」のイメージは、人々の憧れをかき立て、ロイヤルウェディングが新聞紙上を賑わせるたびに「花嫁=白」という概念を強固にしていった。
さらに19世紀末から20世紀初頭にかけての映画産業も、スクリーンに映る大富豪やセレブリティの白いウェディングドレスを繰り返し描くことで、白い花嫁姿のロマンティックなイメージを世界中に浸透させ、メディアの力が「白が花嫁の色」であるという社会的常識を確立したのだ。
産業革命による布地の普及
産業革命が進む19世紀後半、繊維工業は蒸気機関や機械紡績の導入で飛躍的に発展し、これまで高価だった白い生地が大量生産され始めた。
化学的な漂白技術も改良され、かつては王侯貴族だけの特権だった純白の綿やリネンが、中産階級にも手の届く価格で市場にあふれるようになった。
しかしながら、シルクや精緻なレースといった高級素材の白は依然として贅沢品であり、「特別な日のための色」としての価値を保ち続けた。
この布地の普及があって初めて、白いウェディングドレスは王室の真似事ではなく一般家庭の結婚式にも取り入れられ、「花嫁は白をまとってこそ晴れの日」という新たな習慣が社会全体に根づいていった。
近代婚礼儀礼の標準化
日本に焦点を当てると、明治時代以降、政治の方針によって、皇室の神前結婚式がモデルとなり、日本の婚礼儀礼は全国的に統一された。「節子妃が白無垢を身に包んだ」という新聞報道を契機に、白無垢と神前式は憧れのスタイルとして広まり、その翌年には東京大神宮が一般向けに神前式を受け入れ、都市部を中心に神社での結婚式が急速に普及することとなる。
一方、明治の開国により、同時期に、白いウェディングドレスも日本にやってきた。
大正時代には、キリスト教式チャペル婚やホテル内の教会式場が作られるようなり、比較的裕福な階級のカップルに白いウェディングドレスが普及するようになった。
1920年代以降は、都市化が進み、大型ホテルや専用式場に神前式神殿と洋式チャペルが併設されるようになり、新聞や雑誌で、「神前式+白無垢」と「披露宴+白ドレス」を新しい結婚式の定番パッケージとして繰り返し紹介し、やがて、中産階級も手の届く憧れの挙式スタイルとして急速に広まった。
こうして、和洋を問わず「花嫁は白」を着るのが当たり前の婚礼スタイルとして定着したのである。
現代の白い花嫁衣裳
戦争期には、派手な結婚式は控えられていたが、戦後、社会が安定を取り戻してくると、華やかな結婚式も再開される。
戦後の価値観は、多様化した。花嫁衣装も望めば何でもありである。それでも、白の花嫁衣装は、依然として人気だ。白を選ぶ花嫁が断然多数派なのだ。
それはやはり、白い色から受け取る象徴的な意味合いからだろうか、メディアから受け取る憧れからか、ブライダル産業による演出からか。
ただ言えることは、花嫁は白という概念が、現代の人々の心に間違いなく根付いているということである。
まとめ
白いウェディングドレスは、当時の世界のスタンダードを作っていたイギリスのヴィクトリア女王がそれを着たこととそれが世界で報道されたこと、そして、産業革命により、それまでは高級で王侯貴族だけが手に入れられた白い布が、一般市民にも手が届くようになったことで、世界中に普及した。日本もそれを取り入れた。一方白無垢は、武士の時代の白い婚礼衣装が起源。明治政府による神道推進政策で、それが神道に導入推奨され、皇室の白無垢での神前結婚式をきっかけに、全国に普及させていった。その後、日本の結婚式業界により、白無垢と白ドレスの結婚式パッケージが定番化され、今日でも、花嫁は白の概念が定着している。
探偵のひとこと
“汚れたら大変な白”を選ぶって、結婚生活の予行演習かもね