サンタクロースがひげを生やしている理由!
サンタクロースの特徴はいろいろあるが、白くて長いひげをたくわえていることもそのひとつである。むしろ、ノーひげ、ノーサンタといってもいいくらい、サンタクロースにひげは欠かせない。サンタクロースはなぜ、ひげを生やしているの?
サンタクロースがひげを生やしている理由
サンタがひげを生やしている最大の理由は、
- モデルとなった人物がひげを生やしていたから
現在日本でおなじみのサンタクロースは、19世紀のアメリカ・ニューヨークで誕生した。ヨーロッパからの移民の街ニューヨークで、オランダのシンタクラースのお祭りがもとになって、創造された、とされている。
モデル1 シンタクラース
サンタクロースの直接のモデルとなったといわれているのが、オランダの「シンタクラース Sinterklaas」、または「シントニコラース Sint- Nicolaas」と呼ばれる人物。
現在のオランダのシンタクラースは、このような姿で再現されている。
ウィキペディアより
シンタクラースは、白い豊かな髭をたくわえている。年齢設定は、おじいさんだそうで、髪の毛とひげが白いのは高齢であるからと言えよう。
サンタクロースが創造される前、1810年に、ニューヨークで描かれたシンタクラースの絵がこちら。
名前は、セント・ニコラスと英語になって、暖炉に靴下がぶら下がっている様子も描かれている。
先出の現代シンタクラースの写真と、見かけのイメージはだいぶ違うが、長い「ひげ」はちゃんとある。
モデルその2 聖ニコラオス
そのシンタクラースのモデルとなったといわれているのが、「聖ニコラオス」または「ミラのニコラオス」と呼ばれる人物。
3世紀後半から4世紀、現在のトルコに当たる地域に生きた実在の司教・神学者である。自分の財産を使って、弱い人や貧しい人々を助けたことで知られ、長きにわたり、ヨーロッパ各地で聖人として崇拝されてきた。
聖二コラオスは長生きであったことから、老人の姿で伝承されていて、このような姿で描かれる。
不明 - Saint Catherine's Monastery, Sinai (Egypt) / K. Weitzmann: "Die Ikone", パブリック・ドメイン, リンクによる
こちらのサイトに、骨から再現したお顔などいろいろな肖像が載っているが、どれもひげをたくわえているところは同じである。そして老齢だから髭の色は白やグレー。
ではなぜ、ひげを生やしていたのか。または、ひげを生やしていたとわかるのか。
聖二コラオスがひげを生やしている理由
それは、宗教上の理由である。
聖ニコラオスの時代のキリスト教は、ローマを中心とした西方教会とコンスタンチノープル(今のイスタンブール)を中心とした東方教会で、考え方の違いが大きくなってきていた。「ひげ」についても、その違いの一つ。
西方は剃る派、東方は生やす派。
なので、聖ニコラオスは当然、ひげを生やしていた、ということになる。
聖ニコラウスが生きた時代から700年ほどを経て、キリスト教会は、完全に東西に分離した。東方教会の聖職者は今日でも、ふさふさのひげが、その特徴である。
このように。
The Holy Synod of the Hellenic Orthodox Church (Greece) recognized the canonical nature of autocephaly granted to the Orthodox Church of #Ukraine & granted the right to resolve the issue of its recognition by the Orthodox Church to the Archbishop of Athens, Cerkvarium reports. pic.twitter.com/tkhyZQdJiv
— Hromadske Int. (@Hromadske) August 28, 2019
そして西方は剃っている。現代の両トップを比べると一目瞭然。
左が西方ローマカトリック教会のトップ、ローマ法王フランシス、右が東方ギリシャ正教会のトップ、アテネ大主教イエロニモス2世。
ひげを生やすことを重んじる根拠は、旧約聖書。キリスト教初期は、ひげや髪を伸ばすことは信仰の証明であった。東方教会は、その習慣を守り、聖職者はひげを長くたくわえるように定められている。
モデルその3 エルフ
エルフとは、北部ヨーロッパに伝わる妖精である。ゲルマン神話に起源がある。
1823年12月23日、サンタクロース誕生の歴史に必ず登場する作品、「A Visit from St.Nicholas」(聖ニコラスの訪問)という詩が、ニューヨークのセンティネル紙で発表された。
この詩には、セントニックSt.Nick(ニックはニコラスを短くした呼び方)が登場し、その姿がエルフになっている。
セントニックは、小柄で、目はキラキラして、ほっぺがバラ色で、陽気なえくぼとサクランボみたいな鼻で、まっ白いひげが生えていて、小太りで、おなかがゼリーみたいにぷるんぷっるんで、まさにエルフのおじいさんだ、と描写されている。
つまり、セントニックはシンタクラースとエルフが合体してイメージされたキャラである。よって白いひげは、エルフというより、シンタクラース由来であるといえるだろう。
1864年版の本では、このような挿絵が描かれている。
この詩や絵から、現在のサンタに引き継がれた要素は、小太りなところや、陽気な顔の特徴の方であろう。
サンタクロースの姿を決定づけたといわれる絵
それがこの絵。
ひげを生やして太っていておもちゃを運んでくる陽気なおじいさん。今のサンタと変わらないイメージだ。ただし、人間というよりエルフぽい。
これは、トーマス・ナスト氏によって描かれた”Merry Old Santa Claus”という絵で、Harper's Weeklyの1881年1月1日号に掲載された。
Harper's Weeklyは、1857年から1916年にかけて、ニューヨークで発行されていたアメリカの政治雑誌。
スミソニアン・マガジンによると、一見平和なこの絵であるが、よく見ると軍隊のバッグを背負い、軍人のようなバックルとベルトを身に着け、剣もある。実は兵たちに手厚いサポートをすべきという政府に向けたメッセージが入っているのだという。
トーマス・ナスト氏がHarper's Weeklyに描いたサンタは33点にあるそうだが、一番最初に描いたのは1863年、南北戦争のキャンプを訪れたサンタを描いたものであった。
豊かなひげをたくわえたサンタは、星条旗の模様が入った服装をして、プレゼントを配っている。周りに描かれた人間とは明らかに違った容姿で、エルフとして描かれていたといえるであろう。
Harper's Weeklyは、南北戦争時に、アメリカでもっとも読まれていた雑誌で、ナストの描くサンタクロースのイメージは、アメリカ人の共通のサンタクロース像になっていった。
その後、20世紀にはいると、よく知られている通り、コカ・コーラ社がこのサンタ像を広告に取り入れる。コカ・コーラ社のサンタクロースは、アーティストのハドン・サントブロム氏が描いたもので、すでにアメリカ人が共通して持っていたサンタ像を、より人間風に、愛される広告キャラとして発展させたものである。
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まとめ
サンタクロースがひげを生やしているのは、モデルがひげを生やしたおじいさんのキリスト教の聖人であったから。長いひげは、現在でもキリスト正教会の聖職者の特徴である。